近年、配当を安定的に出す企業、特に「累進配当政策(=減配せずに配当を維持・増加させる方針)」を掲げる企業が注目を集めています。
なかでも日経新聞などで紹介される「連続累進配当銘柄」は、投資家にとって魅力的な存在に映るかもしれません。
しかし、「毎年配当を増やしているから安心」と決めつけるのは早計です。表面上は配当を増やしていても、その裏には注意すべきポイントが潜んでいます。
✅ 累進配当とは?
「累進配当」とは、「減配を避け、配当を維持または増加させる方針」を意味します。
EPS:1株あたり利益に関わらず、「前年を下回らない配当を出す」ことを約束することで、投資家に安定感をアピールします。
これは、欧米企業でもよく見られる手法で、企業の株主還元姿勢を明示する手段として一定の信頼を集めています。
⚠️ 累進配当=安全、ではない
しかし、ここで重要なのが「利益と配当のバランス」です。
中には、「EPS(1株あたり利益)を上回る水準で配当を出している企業」も存在します。
たとえば、
- 業績が落ち込んでいるのに減配せずに配当を維持
- フリーキャッシュフローがマイナスでも、配当を継続
- 自社株買いなどと併用し、還元余力を使い果たしている
このようなケースでは、企業が自己資本を削ってまで配当を出している可能性があり、長期的な成長力や経営の柔軟性を損なうリスクがあります。
📊 見るべき指標:配当性向とEPSの関係
累進配当銘柄を選ぶ際にチェックしておきたい指標は以下の通りです。
- EPS(1株あたり利益)
- DPS(1株あたり配当)
- 配当性向(DPS ÷ EPS × 100)
- 営業キャッシュフローやフリーキャッシュフロー
配当性向が100%を超えている場合、その配当は“持続可能”とは言い難くなります。
短期的には継続できても、長期的には無理が生じる構造です。
💡 投資家に求められる視点
「連続増配しているから」「累進配当だから」といった表面的な情報に頼らず、「企業の利益構造やキャッシュの流れを見抜くこと」が重要です。
とくに以下のような視点を持つことで、より健全な投資判断が可能になります。
- 増配の裏にある「財務基盤や収益力」は盤石か?
- 景気後退時にも「減配せずに持ちこたえられるビジネスモデル」か?
- 配当を無理に維持することで「成長投資が犠牲になっていない」か?
📌 まとめ:累進配当は“手段”であり、“目的”ではない
累進配当銘柄は、長期投資家にとって非常に魅力的な選択肢になり得ます。
しかしその一方で、「増配=正義」「減配=悪」といった単純な見方は避けたいところです。
大切なのは、「その配当がどこから来ているのか」、そして「それが続けられる構造なのか」を見極めること。
“配当を出す余力のある企業”に投資するのと、“配当を出さざるを得ない企業”に投資するのとでは、結果はまったく異なります。
長期で報われる投資をするために、数字の裏側にある企業の本質に目を向けましょう。