株主総会シーズンになると、企業から「議決権行使書」と一緒に、追加でハガキやパンフレットが届くことがあります。
さらには、まったく別の封筒で「反対票を入れてほしい」という依頼が届くことも。
いったいなぜ、企業はここまでして議決権行使を促そうとするのでしょうか?
そして、内部で対立が起きたとき、個人投資家にどのような影響があるのでしょうか?
○議決権行使を促す理由
✅ 1. 定足数の確保
株主総会を成立させるには、議決権の一定割合(定足数)が必要です。
特に「定款の変更」や「合併」などの重要議案は、特別決議(3分の2以上の賛成)が求められるため、少数株主の協力が不可欠です。
✅ 2. 経営の安定最近では、機関投資家やアクティビスト(物言う株主)が企業提案に反対票を投じることもあり、企業側は個人株主の賛成票を重視しています。
「お任せ投票」での賛成を期待して、あえて追加でハガキやリマインドを送ることもあります。
✅ 3. 敵対的買収・株主提案への対抗
社外からの買収や対抗案が出された場合、企業は自社の方針を守るために、より多くの賛成票を必要とします。
そのため、個人株主にも積極的に議決権行使を呼びかけるわけです。
○内部対立が起きたときに起きること
株主総会前になると、企業とは別の立場の人物(元経営陣や創業者など)から、「企業の提案に反対してほしい」という封筒が届くことがあります。これは企業内部で何らかの対立が起きている可能性があります。
よくあるパターン
創業者 vs 現経営陣:創業家が経営から外れたあと、経営方針に不満を持ち、個人株主に対して「反対票を」と訴える。
外部大株主の対抗提案:投資ファンドなどが会社の方針に反対し、独自の取締役案や経営方針を提示して、支持を呼びかける。
○なぜ封筒が別に届くのか?
会社が送る「招集通知」とは別に、株主には他の株主に向けて意見を伝える自由があるためです。
法律上、虚偽や誹謗中傷でなければ、これは認められています。
○こうした状況にどう向き合うか?
株主として迷ったときは、以下の点に注目すると良いでしょう:
企業提案と反対提案を中立的に比較する
信頼できるメディアやIR資料、有価証券報告書などで背景を確認
判断がつかないときは、「棄権」も選択肢の一つ(賛成も反対もしない)
まとめ
企業が個人株主に議決権行使を促すのは、経営の安定・株主総会の成立・対立勢力への防衛のためです。
一方で、内部で意見が割れた場合には、個人株主に向けて異なる立場からの働きかけが行われることもあります。
こうした動きは、企業がどのような状況にあるのかを知るヒントにもなります。
届いた書類はただの紙切れではなく、あなたの一票が企業の未来を左右するかもしれないというメッセージなのです。